vol.4 天然酵母パン工房「レ・プレジュール」様
人物紹介:レ・プレジュール オーナー&株式会社プレジュール 代表取締役 織田 充氏 福井県内にて現在8店舗展開している天然酵母パン工房「レ・プレジュール」の運営・管理を務める。自家製の材料とこだわりの製法はそのままに、本当に美味しいパンへのあくなき探求を続けて、今後もさらに店舗展開していく予定。 |
(H29.3現在)
HACCP(ハサップ)とは?
HACCP(ハサップ)とは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染などの危害をあらかじめ分析( Hazard Analysis )し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという 重要管理点( Critical Control Point )を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法です。この手法は 国連の国連食糧農業機関( FAO )と世界保健機関( WHO )の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。
参照元:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/
CONTENTS 1分でわかるユニフォーム×仕事人
└すべては「おしゃれで雰囲気のよいお店」と「衛生的なパン作り」を両方実現させるため。
└実際に着用して仕事をする中で分かった「食品白衣」のメリット・デメリット。
└構想に1年かけて開設された工場を、織田社長自らご案内!
└パンの食べ方を変えて、より豊かなライフスタイルを提案したいという想い。
おしゃれなパン屋さんに食品白衣を採用した理由
―今日は初めてのパン工場見学ということで、私自身「食」に関して素人な部分があるため、勉強させていただくという形でお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。パン工場といっても、ウチはパン屋さんという感じですよ。
「パン工場」というと、「作業工程がライン化されていて、ベルトコンベアがあって、パンが流れていて・・・」というイメージがあると思うんですけど、街のパン屋さんの大きいバージョンという感じで、すべて手作業でパンを作っています。
ウチは、他のパン屋さんと品揃えが同じなので、設備投資がライン化ができなくて、細かい手作業が多いんです。なので、工場内は結構ローカルなんですよ。
―工場開設前は、店舗でパンを作り、作ったものをそのままお店で売られていたんですよね。
そうそう。でも、工場で着るような食品白衣を着て、おしゃれなお店で販売と一緒にパンを作っている、というと違和感がありますよね。お客様は、おしゃれなパン屋さんや、雰囲気のいいお店でパンを買いたい。けれど、髪の毛が入っているのは嫌がるんですよ。なので、「おしゃれで雰囲気のよいお店」と「衛生的なパン作り」を両方実現するために、販売店とパンを製造する場所を離したんです。衛生管理をした工場を建てて、そこで作ったパンを各店舗に出荷する。そうすれば、お店は工場開設前のおしゃれな雰囲気のままパンを売れる、という形態にしました。
そういった形態の中、「工場で着るようなユニフォームで働く」というコンセプトで、今回のユニフォームを採用したんです。
以前の、販売と同じ空間でパンを作る形態は、どうしてもお客様の行き来や、トイレのドアの開け閉めの動作があるんです。「食品」って基本的に外気との接触から離さないといけないんですが、そういう環境だと、どれだけ毛髪落下防止とかに気をつかっていても、トイレの戸が開いたら意味がないという(笑)。
―そうですね、全部空気が流れてしまいますもんね(笑)。それこそ、握ったドアノブから細菌が・・・。とかありえますもんね。
そうそう。
―では、もう今は店舗側にパンを作る場所はないのでしょうか。
一切ないです。ただ、飲食業の免許は取得して営業しているので、店舗展開する際に、最低限の調理ができるようなスペースを設けましたが、あえてやりません。
―江端工場で作ったパンを各店舗に配達し、それを販売することで、逆に店舗側の場所の削減にもなっているんですね。
そうです。当日工場で焼いたパンを店頭に出しているので、「店舗で焼きあがって30分以内に並べたパン」と、「工場から30分かけて配達してお店に並べたパン」は作る場所は違いますが、同じ鮮度でやっていることは一緒なんです。そこの認識さえしっかりお客様にアピールできれば、「衛生的な環境で作っているものが、手元に届いているんだ」ということになるんです。
工場を作った背景としては、店舗経営をしていて、お店の5年後が見えなかった、というのが本音です。
この業界では「食品の潔癖化」とずっと言われていたので、そこに対して、自分は今後起きるであろう「衛生面」と「労働環境」っていう脅威に対して、先行投資して正して行こうっていうコンセプトでこの工場を作ったんです。
なので、今後労働基準が厳しくなっていったとしても、ウチは、ちゃんと週休2日制にしていますし、なおかつ、原料表記もしっかりしているので問題はありません。
もともと、美味しいものを作って差別化することを追求していましたが、お客様が増えていくと、美味しさだけじゃなく、「安全なパン」を求める人も出てきたりしたので、衛生面も追求するスタイルにシフトしました。
ウチのように、「どうしたらもっと衛生的なパンが食べられるか」に対して、取り組むパン屋さんがあってもいいんじゃないかと思うんですよね。
他のパン工場では、4日間、日持ちするパンを製造し、4日後に廃棄しているのですが、4日鮮度を保つためには、保存料などの薬品を使わなくてはいけないんです。でも、それはしたくない。そこで、当社では売れ残ったパンは当日廃棄にして、お店で作っていたときと同じ鮮度のパンを提供しているんですよね。安全・衛生面と美味しさを両立することで、他のパン屋さんと差別化しています。
食品白衣に求めるもの・実際に着用して気づいた点
食品白衣・毛髪落下を防ぐ衛生帽子・滑りにくい厨房シューズを身につけ、徹底的に清潔で安全な状態を維持
―今回導入した、食品白衣を選んだポイントは何だったのでしょうか。
簡単ですよ。「安くて、異物混入を防げるもの」です。
厨房って、結構過酷な労働環境なんですよ。鉄板とかが、白衣に擦れてすぐ汚れるし、店頭に立つわけではないから、「おしゃれさ」はいらないんです。
だから、「機能性がよくて、買い替えやすい白衣」である点が選んだポイントですね。
工場開設にあたり、いろいろ勉強した中に、「工場白衣に対する3原則」というものがあって、それは、菌を「持ち込まず」「持ち出さない」ことが基本、という内容でした。
「まずは、ユニフォームから菌を持ち込ませない」ようにすることが大事、と書かれていたので、今回、食品白衣を導入したんです。
1着目のユニフォームは、スタッフに支給していますが、2着目以降は、各自スタッフが買い替える、というルールにしているんです。
だから、スタッフが買い替えやすいように、コスト面も考えました。
お客様から見える部分(店舗)は、機能性よりも、デザイン性や雰囲気を重視したユニフォーム。お客様から見えない部分(工場)は、デザイン性よりも、機能性を重視したユニフォーム。
という認識です。
―ユニフォームはすべて、スタッフが買い替えているんですね。
そうです。衛生帽子やパンツは、意外と汚れにくかったり、破損しにくいのですが、やっぱり、上衣は手作業をする部分なので、一番汚れます。
―食品白衣を導入したことで、異物混入は減ったのでしょうか。
はい。以前に比べて、ぐっと激変しました。
―実際に食品白衣を着用してみて、「この部分、もっとこうだったらいいのにな」という点はありますか?
腕まわりがたるむ点ですね。
少し腕を伸ばした状態での作業だと大丈夫ですが、手元の作業だと、腕まわりのたるみがパン生地についちゃうんですよね。基本的に服って、高いところから低いところへ落ちていくので、たるみは肩から手首に落ちてくるんです。絶対。だから、白衣が大きければ大きいほどたるんで、パン生地がつくことになるんです。だからといって、たるみをボタンで留めるとかにしちゃうと異物混入となりますし。
ウチのように、「スリムなシルエットの食品白衣がほしい」という工場はいっぱいあるんじゃないかなって思うんですよね。ストレッチ性があって、タイトなユニフォームがあれば、作業性が上がるんじゃないかって思います。
―確かに、手首がゴムできゅっと締まっていて、中に体毛落下防止ネットがあるという構造なのに、パン生地に衣類が触れてしまったら意味がないですよね。
そうなんですよね。
ゆったりとしたシルエットの食品白衣
―半袖+インナーコンプレッションを合わせる工場もありますが・・・。
ウチも、インナーコンプレッションを導入したことがあるのですが、それをすると、逆に暑くて汗がすごいんですよね。人って体内から熱気が出るでしょ。だから、肘上までコンプレッションがあると、汗が垂れてしまいかねないので、食品白衣に変えました。
日々忙しく工場内を駆けめぐるスタッフ
―他に、今使用している食品白衣で、「こうだったらいいな」という声はありますか?
えっと、あとなにがあるかな・・・。袖まわり以外では、今のところ現場からの声はないですね。やっぱり食品白衣は、「汚れるもの」、「消耗品」と捉えているので、耐久性はまったく求めていないんですよ。正直言うと。だいたい、みんな白衣が汚れたら捨てるので、「破れたから捨てる」ってよっぽどじゃない限り、なかなかないんです。破れるとしたら、「コンロの近くにいて少し熱が加わってしまって焦げた」とかであって、それは素材の問題じゃなくて作業の問題なので。「その人が動くことに対して耐久性がない服」って今あまりないと思うんです。そうなると、薄地でもいいので、動きやすいストレッチ性があったほうがいいと思うんですよね。
―異物混入が防げて、なおかつストレッチ性があるもの、ということですね。
そうです。
「鉄板を触るスタッフは特に白衣が汚れるので、専用の前掛導入を考えてあげなくちゃな」と織田社長
―工場内でみなさん同じ白い白衣を着用されていると、工程ごとに仕事をしているスタッフを見分けることが大変ではありませんか?
そう。それ最初、「スタッフを判別できない」っていう文句の声もあったんですけど、今はないです。一緒に働くスタッフを判別できない人って、そもそもスタッフを覚える気がないんですよ。だから、みんな同じ白衣で名前がわからないって声もありましたが、名前が書いていなくても、例えば、白衣の汚れであったり色んな視覚情報で覚えるんです。白衣に名前をつけるのもコストがかかるし、じゃあ「名前が書いていなかったらどうするか」、そうやって判断基準を高めると、人は考えるようになるんです。その人が何をしているかをみれば覚えるし、「今日、機嫌が悪いのかな?」という相手のコンディション面も分かるし、そうやってスタッフを判別すればいいんじゃないかなって思うんです。
―今、作業工程ごとにユニフォームの色を変えて、スタッフの動線を交差させない「交差汚染対策」の白衣が販売されているのですが、そういったものを導入しよう、というお考えはありますか?
それも良し悪しでね。コストがかかるんですよね。
―そうですよね。
白衣に関して、僕らはなるべく簡素化したいんですよね。「交差汚染対策」の白衣を導入することで、コスト面などとバランスが取れないと話にならないので。それだったら、僕「バンド」でいいんですよね。アームバンドとか、キャプテンが身につけるようなやつ。
―ユニフォーム自体の色で見分けられるようにするのではなくて、ということですね?
そうそう。そういうワンアクションでいいんじゃないかな。ゴム製のアームバンドをパチンと腕にすれば、袖のズレを防げるし、目印にもなる。これだと色付き白衣で見分けるよりも、結構コストが軽減されるんじゃないかな。
―そうですよね。ユニフォームをまるごと分けるとなると、それこそ「緑のMサイズがない」とか、カラーやサイズの欠品が発生しますもんね。
うん。だから、洗濯できるバンドがあるといいよね。そこに名前を書いてOK!というものがあると一番いいかもしれないですね。これ商品化したら売れるかもしれないですよ(笑)。5色か6色くらい色を用意して、さらに洗濯もできて、さらに名前も書けて・・・。
―そのアイディアいただきます(笑)。
採用商品はこちら
めったに見られないパン工場の裏側、全部見せます!
江端工場開設にあたり、さまざまな食品工場を見学し、一つ一つの工程場を把握。そこから、何が必要かをたくさん調べました。菌を「持ち出さず」「持ち込ませず」を徹底した工場内の動線を考えに考え、工場の図面を完成させるのに一年を費やしました。
お客様に、美味しくて安全なパンを食べていただくために、細かく衛生管理をおこなっていること、とことん「手作り」にこだわってパンを作っていることを知ってもらいたい。そんな思いから、今回は、特別に工場内をお見せします!
【1:ロッカー・更衣室・休憩室・給湯室】工場内に入る前段階での衛生管理も、すべて「見える化」にしている
ロッカーは常に清潔に保つため、毎日除菌。
また、同じ人が同じロッカーを使わないように、使用するロッカーも毎日チェンジしています。
出勤したらまず、ホワイトボードに、その日自分が使用するロッカー番号を確認し、そこにネームマグネットを貼ってもらっています。こうすることで、今日は誰が出勤していて、どのロッカーを使っているのか、をひと目で確認可能。万が一、ロッカー内が不衛生な状態だったときに、誰が原因なのかを明確にできるようになりました。
また、最近スタッフ全員に日報を書いてもらうようにしています。
それまでは、会話でしかスタッフとコミュニケーションをとる機会がなかったのですが、日報でその日の作業を報告してもらうようになり、情報伝達や、休んだときのシフトの助け合いなど、より密にコミュニケーションがとれるようになりました。工場内の衛生面を保つためには、ひとつひとつ「見える化」にして、管理する必要性をひしひしと感じています。
「誰に向けてパンを作っているか」を常にスタッフ全員が忘れないために、お客様の写真を飾っている
【2:下足室・手洗い室】全身を清潔な状態にして、工場内に入る準備をする場
下足室では、勤怠を打刻するスペースの他に、持ち出し可能な掃除の札を掲げています。札を持って確認しながら、担当者は毎日徹底的に工場内を掃除しています。
手洗い室は、触った蛇口からの菌の増殖を防ぐために、蛇口式ではなく感知センサー式を導入。手を洗う工程は細かく決まっています。
「毎日さまざまな健康状態のお客様にパンを提供しているんだ」という緊張感と責任を持って手を洗ってほしいので、壁には注意喚起の言葉を掲げています。ここだけではなく、すべての工程場の目につくところに、注意喚起の言葉を貼っています。これも僕の思いの「見える化」なんです。手を洗う工程が多いので、壁には映像プレーヤーを設置し、手洗い中に見られる映像を流しています。こうして緊張と緩和のバランスをうまく取っています。
【3:前室・生地冷凍プレハブ・パイ室】パンを作りたい!という思いを形にする場
パン業界では、「機械化」と「手作り」の二極化が進んでいますが、「パンを作りたい!」という情熱をもって働いている人がウチには多いから、「手作り」を大事にしていきたいと考えています。
そんなスタッフが快適に働けるよう、夜中の2時から生地作りのために出勤してもらうのではなく、パン生地を一晩寝かせて発酵させる方法に変更。こうすることで朝4時に出勤し、製造することが可能になりました。クロワッサンを練り込む部屋は、バターの硬さを維持するために常時13度に設定しています。
ちなみに、りんごジャムも手作りなんですよ(笑)。
【4-仕込み室・材料室】材料への異物混入も防ぐため、設備投資に力を入れている
お米と一緒で、パン粉も暑いところで保存していると袋の中で虫が沸いてしまいます。そういった「材料からの異物混入」を防ぐために、冷凍保存をしています。
【5:焼成室・ゴミ処理室】独自に開発した機械でパンを焼成し、効率アップ
焼成室には、オーブン以外に、一度でたくさんのパンが焼ける機械もあります。こちらは、独自で開発したものなんですよ。
工場内で出た生ゴミ廃棄は、工場内で捨てる場所があります。それを外側からシャッターを開けて、外に持ち出して廃棄するという、徹底して中と外が交わらないような仕組みを作りました。
【6:調理室・調理冷蔵プレハブ】「ここまで手作りなの!?」と驚きの連続の場
食事パン用のポテトサラダやチキンまで、全部ここで一から手作りしています。
【7:仕上げ室】すべての工程を終えて出来上がったパンを、お店に出すための最終準備をする場
パンひとつひとつに、原材料を表記したシールを貼っていきます。
材料も「見える化」にすることで、お客様に、安心してパンを食べていただけるようにしています。
【8:出荷室】焼きたてのパンを8店舗へ出荷する準備の場
出荷室には、出荷場所を間違えないように、各店舗地域の頭文字が書かれた札を、見やすい形で貼っています。
出荷は1日に4回。パンを入れるトレーも清潔な状態を保つため、専用の洗浄機で毎日洗っています。洗浄機にはトレー10個分が入り、だいたい1分半で洗浄完了します!
パンを売るだけではなく、パンが食べたくなる「シーン」を売りたい
―今後どのようにしていきたいか、という目標をお聞かせいただけますか。
食事パン単体を売ろう、食事パンだけを増やしていこう、ではなくて、食事パンが食べたくなるシーンを売っていくことが目標ですね。
「時間がないときに、おなかをふくらませるためだけに、コンビニパンを食べる」というパンの食べ方自体を変えたいんですよね。
例えば、「フランスパンを食べるためには何が必要なの?」ということから考えてみると、「フランスパンを薄くスライスしてカナッペにする」、「それに合う手作りのパテや、ディップが売っている」、「それで、友達の家でホームパーティーができる」、「パーティーで使えるような、おしゃれな紙皿もお店で一緒に売っている」、さらに、「キャンドル式のチーズフォンデュができるアイテムが売っている」・・・。それだけアイテムがそろっていれば、ホームパーティーでもなんでもできるじゃないですか。
―「パンを通したライフスタイルの提案」という感じですね。
そうそう、そういうものを売っていくことがいいのではないかな、と思うんです。
というのも、これから専門店は結構辛くなっていくと思っているんです。僕が実際にパンの専門店をやっていて感じたんです。お客様が、手軽に情報を手に入れられるようになった瞬間から、お客様にとっては専門性が必要ではなくなって、専門性を通したシーンを求めるようになっているんですよね。
例えば「スターバックス」がなぜ売れているのかというと、コーヒーショップだったら普通、ひたすらコーヒー豆を売ればいいじゃないですか。でもスターバックスは、コーヒーカップとか、コーヒーマシーンとか、スタバのマークが入った雑貨をいっぱい売っているんですよね。それは、家に持って帰ったときにスタバを思うっていうシーンを売ってるんです。
では、実際売れないお店はどうなのかというと、コーヒー豆をひたすら並べているお店なんですよね。お客様は減っていく、でも売り上げは伸ばしたい。そうなると客単価を上げるしかないんです。一日にコーヒーを飲む回数って増やせますか?
―確かに限界はありますね(笑)。
だから、そこにコーヒーカップやお花が売っていたりすると、客単価が上がるじゃないですか。
これからの専門店って、そういう「モノ」の専門店から、「シーン」の専門店に少しずつシフトしていくんじゃないかなって思うんですね。
雑誌を開いたときのようなイメージ自体が、お店にあるっていうイメージなんです。
―なるほど。勉強になります。これからプレジュールさんが、どう変わって行くのか見ていきたくなりましたし、今回工場を見学させていただいたことで、今後、お店に行った際の見え方がガラッと変わるんだろうな、と思いました。
まあ、パン屋さんは、お店の雰囲気込みで買っていただいてナンボなところもあるので、
「その中に、どれだけ自分の思いを詰め込めるか」っていうのが商売だと思うんですよね。
やっぱり独りよがりでする商売ではないことはすごく分かるので。どういうふうにお客様が求めているかを見て、どれだけ出しきれるかってことだと思うんですよね。
また、「安くて、ナチュラルな手作りパン」を提供することで、「安価なコンビニパン」に流れていくお客様を、街のパン屋さんに取り込んでいきたい、そして、パン業界が盛り上がっていってほしい、と考えています。
―パン業界の現状はいかがでしょうか。
今、パン業界はすごく需要が上がっています。パン屋さんもすごく増えています。ただそのパンを作る職人さんが減っているのが現状です。だって夜中の2時から働けますか?(笑)。
―よっぽどパンづくりが好きじゃないと働けません(笑)。
でしょ?夜中の2時から夕方の5時まで働いて、週1日しか休みがなくて、月に1回だけ2連休があって・・・。こういった労働条件で働けますか?
でも、こういうパン屋さんがほとんどなのが現状です。
―いや~、お忙しい中ここまで現場を見せていただいて、なおかつお話を伺えてありがたいです。
これだけお見せできるのは、絶対真似できないという自信があるからなんです!
自分がかけた時間と発想を、他の誰かに真似されたとしても、絶対できない自信があるんです!
だから工場見学に対しても、これだけオープンなんですよね。
人は変化を拒むので、誰かが新しいことや、今までにないようなことをすれば、世間的にも反発されるし、お店で焼いていないというだけで、「焼きたてじゃない!」と言われたりします。でも一方で、コンビニでは当たり前に「焼きたてではないパンを買う」という文化があるのに、見せ方が違うだけで反発されたり・・・。
ウチのように、これだけ立て続けにパン屋をオープンできるのは前例がないんですね。
でも、ウチがやってしまったっていうと、色んなところから反発がありますが、まあ仕方ないんです。でも誰かがやらないと。
待っているのは、コンビニパンを占めるメーカーの受け皿なので、その皿をドーンと割らないといけないんです。
そのために、江端工場をしっかり「データ化」、「仕組み化」しています。そして、仕組みができたら、これを全国展開していきたいんです。
1地域1工場。それが自分の夢なんです。
最終的には、
コンビニパンにお客様が流れてしまった、地元スーパーのパン屋さんを吸収、再建したい。
そして、衰退して人がいなくなった地方のパン屋さんを救済し、販売場にしたい。
さらに、使われていない卸工場を活用していきたい。
「パン屋さん創生型」にしていきたんですよね。将来的に。
「打倒コンビニパン」ですから(笑)。
―本日はお忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございました!
インタビューを終えて
食品白衣ユニフォームをネット販売する身でありながら、実際の「食」の現場をあまり理解していないと感じ、今回、工場見学をさせていただきました。ここまでオープンに工場内を見学させていただけたこと、パン業界の実態や、食品白衣を実際使ってみた感想を、赤裸々に語る織田社長からは、自信と、パン作りに誇りを持ち続けて、さらに「誇りに思える仕事を、次の世代に残していきたい」という思いをひしひしと感じました!この記事がHACCP(ハサップ)制度化に向けて、食品白衣導入をお考えの人たちの参考になれば幸いです。また、パンの食べ方を見直すきっかけとなれば嬉しいです。私自身も、お忙しい中貴重な時間を割いてお話いただいた内容を、今後の食品白衣ユニフォームの販売に活かしていきます。織田社長、快く工場見学を引き受けてくださり、本当にありがとうございました!今後のレ・プレジュール様のご活躍、ご発展を心より応援します!
written by ユニネク制作チーム